京谷謙吾、ハイロック、近藤昌の3人

CROSS TALK

TOOLS × HIROCK× AIR RHIZOMEが仕掛ける

「大人のための秘密基地」

家具と道具、そしてカルチャーの交差点から生まれた新プロジェクト『HIDEOUT SUPPLY』の裏側

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スタイリストの近藤昌(TOOLS)、アートディレクターのハイロック、そして老舗家具メーカー、エア・リゾーム代表の京谷謙吾。サーフィン仲間というプライベートな繋がりから始まった3者のタッグによって、新プロジェクト『HIDEOUT SUPPLY(ハイドアウト サプライ)』が始動した。

掲げたテーマは「大人のための秘密基地」。既成概念にとらわれないユニークな発想を、60年の歴史を持つ確かな家具作りの技術で具現化したプロダクト群は、どのようにして生まれたのか。丸ノコの時計から巨大な定規テーブル、アメリカの倉庫にあるコンテナのようなキャビネット、そしてスニーカーを愛でる「KICKS LAMP」まで──少年のような好奇心と遊び心を忘れない3人が、開発の裏側とそれぞれの空間美学を語り合う。

CONTENTS 目次

TALK MEMBERS

京谷謙吾

京谷 謙吾

株式会社エア・リゾーム/株式会社宮武製作所
代表取締役社長

ハイロック

ハイロック

アートディレクター
HIROCK DESIGN OFFICE

近藤昌

近藤 昌

スタイリスト
TOOLS

「家具興味ある?やらない?」 電話一本から始まった3社コラボ

── まずは今回のプロジェクトが始まった経緯について教えていただけますか?

京谷もともと僕と近藤さんは仕事も含め、プライベートでサーフィン仲間というか、そういったお付き合いをさせていただいていました。近藤さんとは以前家具屋をやっていた頃から「一緒にコラボしよう」という話をずっとしていて、その中で「何か面白いアイデアないですか?」と相談したところ、ハイロックさんを繋いでいただいたのが始まりです。

ハイロック近藤さんからは、いつも通りの電話で「ハイロックさん、家具興味ある?やらない?」って言われて。「やります」と答えて蓋を開けて着手してみたら、こんなに大きなプロジェクトだったという(笑)。電話の時点では、小学生が夏休みの宿題で椅子を作るくらいの軽いテンションで誘われましたからね。

京谷ちなみに近藤さんからは「面白い人がいるから」って紹介されました。

近藤京谷さんからお話をいただいた時に、「やるんだったらハイロックさんとやりたいな」と直感してすぐに電話しました。断られたらどうしようとかは何も考えず。

ハイロック全然断るつもりなんてなかったですよ。

京谷むしろ社内でも「ハイロックさん」の名前が挙がった時はかなりざわつきました。今まさに旬の方なので。

ハイロック嬉しいですね。おかげさまでコンビニのプロジェクトなど、いろいろやらせていただいています。

「男は成熟しなくていい」 大人のための秘密基地という逆転の発想

3人がテーブルを囲んで対談する様子

── 今回のコンセプトは「大人のための秘密基地」とのことですが、なぜこのテーマに辿り着いたのでしょうか?

ハイロック世の中にはすでに良い家具がたくさんありますよね。海外のおしゃれで安価なものもあれば、日本のベーシックで手頃なものもある。そんな中でこの3社がタッグを組んだ時に、競合と被らず自分たちの独創性を発揮して良いものを作るなら、どこを目指すべきか。たどり着いたのが「秘密基地」というテーマでした。そこで、子どもの頃のような遊び心を大切に、自分たちの得意なフィールドで家具を作ってみようということでスタートしました。

── 皆さんは子どもの頃、どんな秘密基地を作っていましたか?

京谷僕は湘南出身で海文化育ちなので、海の土管の中なんかに秘密基地を作っていましたね。そこでみんなで駄菓子を食べたりしていました。今でも自分たちの好きなものを集めて隠しておくようなノリが好きなんです。近藤さんの千葉のご自宅に行くと、サーフボードがたくさんあって、リペア機材があって、可愛い犬がいて、すごく秘密基地感があるんですよ。

近藤倉庫がそのまま家になっているような感じですからね。

京谷そういうアイデンティティや暮らし方にすごく魅力を感じるんです。

ハイロック僕と京谷さんはほぼ同世代ですが、少し年上の近藤さんも、子どもの頃は秘密基地を作って遊んでいたんですか?

近藤もちろんありましたよ。今回のコンセプトで本当に良いなと思ったのは、「男って大人になって成熟してそうに見えて、実は全然成熟しない」というところ。ことわざにもありますけど、男性っていつまでも子どものままで、大人になると「いい加減大人になりなさい」と言われ続けるわけじゃないですか。だったら「成熟しないなら、しなくていいんじゃないか」と。そこを逆手に取って楽しめるようになったらいいなと思ったんです。忘れていた気分を蘇らせてくれるし、「これでいいんだ」と自信を持たせてくれる。ずっと形にしたかったことが、これを通じて実現できた気がします。

ハイロック買ってくれたお客さんが「あ、この感覚って昔あったな」と気づいてくれる家具になってくれるといいですよね。

京谷家具作りって、「座る」「寝る」といった機能からチェアのデザインをスタートすることが多くて、それだと意外とつまらなくなってしまうこともあるんです。でも今回は、明確なコンセプトから形へとアウトプットしていく流れだったので、社内のメンバーにとっても非常に新鮮で刺激的なプロジェクトになりました。洋服みたいにグラフィックを乗せるのではなく、コンセプトそのものを立体として立ち上げる面白さがありましたね。

近藤ハイロックさんと僕が出した無茶なアイデアを、きちんと形にしてくれるメーカーの存在が本当にありがたいですよ。開発スピードもすごかったし、価格もきちんと現実的なラインに収めてくれた。

京谷創業60年ほどの歴史があるメーカーとして、技術とプライドを持ってやっていますから。裏ではヒーヒー言いながら調整していましたけどね(笑)。

バカバカしさを形にする 老舗メーカーの技術

対談中のハイロック

── 開発で特に難しかったアイテムは何でしたか?

京谷アイテムで言うと、「ルーラー(定規)のテーブル」ですね。あんな厚みの素材でテーブルを作ることもなかなかないですし、強度の確保も含めてかなり検証を重ねました。

── アイデア出しから具現化まではどのように進めたのですか?

ハイロック基本的には僕がバカバカしいアイデアを提案して、それをお2人に見てもらってフィードバックをもらい、修正していくというキャッチボールです。

近藤うちの会社が「TOOLS(道具)」という名前なので、道具を本来とは違う使い方で面白くできないかとハイロックさんに相談したんです。道具という概念を見つめ直して、馬鹿らしくて楽しいものに変換していきました。

── 京谷さんはメーカーとして、お2人のデザインをどう受け止めていましたか?

京谷僕が一番努力したのは「口を出さないこと」です。家具屋の固定観念が入ってしまうのを避けたかった。僕らの会社、エア・リゾームには「常に2%の遊び心を持つ」という理念があるので、自分たちの枠を超えた新しい挑戦をしたかったんです。お2人を信じてサポートに徹しました。

ハイロックアイデアが予想外の方向に転がれば転がるほど喜んでましたよね。できないことがあっても代替案を出して、そこから新しいアイデアが生まれたりして、本当にプラスの連続でした。

京谷家具としての耐久性や強度をどこまで追求し、どこまでコンセプトに合わせた「ラフさ」を残すかというディテールの塩梅は最後まで悩み抜きましたね。

3人が対談する様子

丸ノコ時計、木箱シェルフ、巨大定規 3人が語る思い入れの1点

── お三方が特に思い入れのあるアイテムを教えてください。

近藤僕は最初に相談した「丸ノコの刃の時計」ですね。使えなくなったチェーンソーや丸ノコの刃を改造して時計にしたようなアイテムです。うちの納屋の壁にかかっていたら絶対に格好いいだろうな、というところから始まったので、とても印象深いです。

丸ノコ時計+ SAW TIME

京谷僕は「キャビネット」ですね。アメリカの倉庫のコンテナの中に雑に置かれている木箱のようなデザインなんですが、社内メンバーと最終チェックしたときに「よくここまでディテールを作り込んだな!」と大爆笑しました(笑)。ここまでやりきっていいのかというくらい作り込んでいます。

木箱をモチーフにしたキャビネット+ CARGO CHEST

ハイロック僕は「ルーラーのテーブル」です。子どもの頃って、父親が使っている万年筆や定規といった大人の道具が妙に格好よく見えて、すごく“大きく”見えたんですよね。子どもの頃に巨大に見えていたあの憧れの定規を、大人になって思いっきりオーバーサイズで作ったらどうなるか、という形です。

巨大なルーラーテーブル+ BIG RULER

スニーカーを見ながら酒を嗜むための照明 「KICKS LAMP」誕生秘話

KICKS LAMPを囲んで話すハイロックと京谷謙吾

── 続いて、「KICKS LAMP」誕生のきっかけを聞かせてください。

京谷atmosさんのイベント「atmoscon」への出展が決まった際、「スニーカーと家具をマッチさせた面白い取り組みができないか」という話が出たのが発端です。近藤さん、ハイロックさんと相談する中で、「スニーカーを眺めながらお酒が飲めるランプ」というアイデアが出てきました。

近藤スニーカー好きの人たちって、居酒屋に行くよりも自分の好きなスニーカーを眺めている時間の方が幸せだったりするじゃないですか。薄暗い部屋の中でスニーカーがライトアップされていたら最高だなと。ハイロックさんが靴底のパターンや支柱のディテールまであの手この手で面白く仕上げてくれました。

ハイロック『HIDEOUT SUPPLY』のひとつのコンセプトとして、「子どもが家にある廃材で寄せ集めて作ったような違和感」を出したかったんです。壊れたランプに長靴を履かせて、傘の骨組みを組み合わせたような。あえてコタツの電源コードを使っていたり、そうしたローテクとハイテクが混ざったDIY感を制作チームが形にしてくれました。

KICKS LAMPについて話す近藤昌とハイロック
KICKS LAMPはこちら

AJ1、サルマーン・アガー、アルファ フォース 3人の足元と偏愛スニーカー

── お持ちいただいたお気に入りのスニーカーについても教えていただけますか?

近藤僕がランプに履かせたいのは「Travis Scott×fragment design」の「AIR JORDAN 1(エア ジョーダン 1)」です。スウッシュが逆さまについている天邪鬼な感じが自分たちに似ていて面白いなと。それと、実際に履く用としてatmosでオーダーしたのが、このadidasの「Jellyfish」。すごく履きやすいんですが、幅がデカすぎて車のアクセルを踏んでもブレーキに引っかかりそうになる(笑)。でも、この未完成なDIY感が『HIDEOUT SUPPLY』っぽいなと思っています。

近藤昌のスニーカー

京谷僕はVANSの「Salman Agah(サルマーン・アガー)」というスケートモデルです。70〜80年代のサーフ・スケートカルチャーが好きで、人生ずっとVANSを履き続けているんですが、このモデルはなかなか復刻されないので、履き潰さないように大切に残しています。

京谷謙吾のスニーカー

ハイロック僕はNIKEの「Alpha Force(アルファ フォース)」です。エア トレーナー系のベルクロ(ストラップ)がついたモデルが昔から大好きで、ビリー・アイリッシュとのコラボモデルも含めて色違いで2足ずつ持っています。小学生の頃にエア トレーナーを初めて履いた時、「靴紐以外で留める構造があるのか」と未来を感じたんですよね。

ハイロックのスニーカー

京谷NIKEの関係者の方が見てくれることを祈って言いますけど、NIKEのソールやエアを組み込んだオフィスチェアとか、いつか作ってみたいですね(笑)。

クロムハーツを手放して暖炉へ⁉︎ 3人の暮らす空間の美学

── 皆さんのご自宅や仕事場は、どのような空間になっていますか?

ハイロックいま取材していただいているこのオフィスがまさにそうなんですが、師匠であるNIGO®︎さんからDNAを引き継いでいて、自分が働く空間には好きなものを徹底的に並べています。自宅の狭いスペースで決断するよりも、広くて凛とした空気感が流れる場所で決断した方が、絶対に良いアイデアが浮かぶと信じているので。逆に自宅は物を少なめにして落ち着かせています。それでも人の3倍くらいは物がありますけどね。

近藤僕は千葉の上総一ノ宮にある、祖母が疎開していた築年数の古い古民家に10年前から住んでいます。中は柱を取り払ってモダンに改装していて、まさに今回のコンセプトのような屋根裏部屋もあります。どうしてもそこに薪ストーブ(暖炉)を入れたくて、手持ちのクロムハーツ仕様のロレックスを手放して資金を作りました。遠赤外線で家全体が暖まるし、ストーブの上で料理もできる。表参道で高級時計を自慢する生活から、千葉で火を眺める生活へ、豊かさの価値観がガラリと変わりましたね。

京谷僕は大好きなヴィンテージの机にジェラシーを感じつつ、身の回りの家具はほぼ自分で作ったもので暮らしています。「自分が作った家具で暮らす」というのは家具屋の一番の特権ですから。憧れのデザインに追いつけ追い越せと思いながら日々家具と向き合っています。

対談中の近藤昌 対談中の京谷謙吾

家具から家電、そして冷蔵庫へ。 これからの『HIDEOUT SUPPLY』

HIDEOUT SUPPLYのコレクションを配置した空間

── 今回のコレクションは、どのような人に届いてほしいですか?

ハイロック幅広い方に使ってほしいですね。80〜90年代の映画やカルチャーから影響を受けているので、その時代を通ってきた世代には懐かしく、令和生まれの若い世代には新しい価値観として面白がってもらえたら嬉しいです。

近藤何より「手が届く現実的な価格」で作れたことが大きいと思っています。ハイロックさんが拠点を置く群馬県前橋市もそうですが、年齢やジェンダーにとらわれない先進的なマインドで、自由に面白がって使ってほしいですね。

京谷ただ帰って寝るだけの部屋ではなく、生活に遊び心を取り入れたいと思っているすべての人に楽しんでいただきたいです。

── 最後に、今後『HIDEOUT SUPPLY』として挑戦したいことはありますか?

ハイロック家具にとどまらず、アパレルや生活の様々なピースを埋めていくようなアイテムを展開していきたいです。家具の第2弾、第3弾もアップデートしていきたいですね。

京谷僕は本気で「冷蔵庫」を作りたいです。家具屋が作る家電ですから、最高峰のハイテク機能は必要なくて、住空間に自然に馴染んで存在感を示してくれる冷蔵庫やエアコン。デザイナーと一緒に本気で空間に向き合った家電を作ってみたいですね。

近藤探しても本当に格好いい冷蔵庫ってないですからね。家電へのアプローチ、ぜひやりましょう。

鼎談を終えた京谷謙吾、ハイロック、近藤昌

TOOLS × HIROCK × AIR RHIZOMEによる
コラボレーションアイテムの
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